犬や猫を飼っていると、ブラッシングや歯みがきなどの日常ケアをしてあげると思います。 その中でも、 足裏の毛の処理と爪切り・肉球の管理は、歩行やジャンプなどの日常的な動きに関わるのでとても重要です。 この記事では、
について解説いたします。 「どれくらいのペースで処理してあげればいいのだろう?」 「自宅でうまくやりたいな!」 という飼い主さんは、ぜひ読んでみてください。
犬や猫の足の裏には、かわいらしいプニプニの肉球がくっついていますよね。 この肉球は、前足と後ろ足でそれぞれ名称が異なり、
となっております。 この肉球には多くの神経が通っており、毛が生えていないことで地面から多くの情報を得ることができます。 また、歩くときや飛び降りたときなどのクッションの役割もしており、足にかかる負担を軽減しています。 汗をかかない犬や猫が唯一汗をかく場所として、肉球は有名ですよね。 人では汗は体熱を放出するためにかきますが、犬や猫ではその役割はなく、汗はもっぱら「滑り止め」としての機能をはたしています。 フローリングでも滑らないで歩けるのは、この肉球の汗のためなんです。 犬や猫の前足には「狼爪(ろうそう)」という人の親指に当たる爪がある場合があります。 狼爪は後ろ足にもある場合もあり、狼のなごりとも言われていますが、特に機能はありません。 手根球は一見何の意味もなさそうですが、下にある手根骨という骨を守るために付いています。
犬と猫の肉球の違いといえば、「柔らかさ」や「色」があると思われます。 猫の肉球はプニプニと柔らかい子が多く、特に室内飼いの子ではその傾向が強いです。 また、淡いピンク色の子も多く、より一層かわいらしさに癒されます。 一方で犬の場合には、表面の角質層が厚いために、すこしザラついています。
お散歩をよくする子や、外飼いの子はその傾向が強くなります。
子犬のうちはピンク色の子もいますが、大人になると黒く変化していく子が多いです。
カツカツカツ…と歩くたびに音が聞こえたり、つるんっと滑ったり…というときには、足裏の状態がよくないことがあります。 犬や猫の足裏のお手入れをしていないと、一体どうなってしまうのでしょうか?
足裏の毛は定期的にカットする必要があります。 一部の犬や短毛の猫では必要ないですが、足の裏を見たときに「指の間の毛が伸びている」なら処理が必要です。 足裏の毛が伸びていると、滑りやすくなったり、ゴミや汚れが付きやすくなります。
トリミングに定期的に行っている子の場合には、そのときに一緒に行いますが、自宅でカットしている子や長毛の猫の場合には「伸びていないか?」をチェックする必要があります。
自宅にてバリカンを行っている方もいらっしゃいますが、肉球を傷つけることも多いので注意しましょう。
爪切りもとても大切です。 爪が伸びていると歩きにくいだけでなく、伸びすぎた爪が巻いてしまい、指に食い込んで出血や感染症を引き起こすこともあります。 特に狼爪の処理は重要で、主に室内で過ごす犬や猫においては削れることがなく、肉球に食い込んでいることがしばしば見受けられます。 爪が長い状態だと、引っかけて爪が折れたり、取れてしまうことも多いです。 引っ掻かれたときに、そこから細菌が感染してしまうこともあります。 さらに、定期的に爪を切っておかないと、中の血管が伸びてしまい、切れる範囲が少なくなってしまいます。
足裏の処置をしていないことで、肉球にもトラブルが生じることがあります。 趾間炎(しかんえん)といって指と指の間が蒸れたり感染が起きることで、かゆみや痛みを生じることがあります。 この場合は、爪切りや毛をバリカンで剃るなど足裏の処理をしっかりしてあげることと、薬用シャンプーや投薬での治療が必要となります。 また、年をとってくると肉球がカサカサになったり、角質が貯まってしまうことが多いです。 出血や炎症を生じることもあるので注意が必要です。
自宅でのケアができると、発見しだいすぐに整えてあげることができるのでいいですね。 足裏の処理や爪切りは、できれば2人で行うとやりやすいです。 1人がおさえて、1人が作業するという感じです。 1人で行う場合は、抱えながらやバスタオルなどでくるんで動きを制御しながら行うようになります。
あまり時間をかけて行うと、飽きてしまって、噛みついたりすることもあるので、今日は1本、明日は1本…というように、1日1本から無理せずに行うようにしましょう。
犬と猫の爪は、人の爪と違って中に血管が通っているので、注意して切る必要があります。 爪が白い犬や猫の爪は、中の血管が見えるので、血管から2mm以上離れた部分を切ってあげるといいです。 爪が黒い犬は少し難しいです… 一度短く切ってもらい、その長さ位に毎回切ってあげるといいですね。 ただ、出血してしまうことも多く、その場合は慌てずにティッシュなどで5分ほど圧迫止血をし、専用の止血剤やなければ小麦粉・片栗粉などを出血部位に押し当てて止血します。 猫の場合は、爪切りを嫌がる子が犬よりも断然多いです。 できれば子猫のうちから、ほめつつしつけておくようにしましょう。
肉球の管理も大切です。 柔らかい分には問題ないですが、硬くなってひび割れたり剥がれてしまうこともあります。 その際には、お湯でふやかして角質をとってあげたり、犬用の角質保護剤や角質除去クリームを使ってお手入れしてあげましょう。
1か月に一回程度のお手入れが目安です。 ただ、毛や爪の伸び方には個体差もあるので、定期的にチェックして、伸びている場合には処理をしてあげましょう。 トリミングに定期的に出している場合には、特に自宅での処置が必要でないことが多いです。
足裏の処理がきちんとなされていないと、歩行に支障をきたし、健康を害してしまうこともあります。 1か月に一度は、ケアをしてあげるようにしましょう。 自宅で行うのが難しい場合には、無理せず動物病院で行うといいですね。
獣医師 渡部美沙