タンパク質摂取の必要性と、種類別(肉類・魚類)の期待できる栄養的な効果
犬や猫などの動物が健康的に過ごしていくためには、良質なタンパク質の摂取が非常に重要です。
ひとえにタンパク質といっても、肉や魚、大豆などとたくさんの種類があります。
また、それぞれに含まれる栄養価も全く異なるので、どういった効果があるのかを考えながら摂取する必要があります。
この記事では、犬や猫がタンパク質を摂取する必要性と、肉や魚などが持つ栄養面について解説していきます。
愛犬・愛猫の健康的な食事管理について知りたい方は、是非読んでみてください。
犬と猫にとって良質なタンパク質を摂取することは大事!
犬と猫にとって良質なタンパク質を摂取することは極めて重要です。
栄養素には五大栄養素という、炭水化物・脂質・タンパク質・ビタミン・ミネラルがありますが、そのどれもまんべんなく摂取することが大切です。
中でもタンパク質は、犬や猫などの肉食寄りの動物にとっては大切な栄養素となります。
タンパク質には、
- エネルギー源となる
- 体の構造を作る
- 生理活性物質になる
という3つの働きがあります。
以下で分けて説明していきます。
①エネルギー源となる
エネルギー源としては、炭水化物や脂質が優先的に使用されますが、エネルギーが不足する場合にはタンパク質も立派なエネルギー源となります。
特に猫は元来肉食動物であることから、炭水化物をうまく利用できないので、タンパク質から糖を作って(糖新生)エネルギー源として利用しています。
そのためタンパク質の要求量が犬に比べて高いという特徴があります。
②体の構造を作る(構造性タンパク質)
タンパク質は、血管や筋肉、皮膚や被毛などあらゆる体の構造を作ります。
そのような作用のあるタンパク質を「構造性タンパク質」と呼び、以下のようなものがあります。
コラーゲン | 骨、軟骨、血管、皮膚、歯など |
---|---|
核タンパク質 | DNA、RNAの材料 |
細胞膜 | リン脂質とともに細胞膜を構成 |
ケラチン | 被毛、爪など |
③生理活性物質になる(機能性タンパク質)
タンパク質は、酵素や物質の輸送など様々な化学反応に関わる生理活性物質にもなります。
そのような作用のあるタンパク質を「機能性タンパク質」と呼び、以下のようなものがあります。
酵素 | アミラーゼやトリプシン、ペプシンなど消化酵素 |
---|---|
ホルモン | インスリンやグルカゴン、成長ホルモンなど |
生体防御タンパク質 | 抗体や補体など |
栄養・酸素運搬タンパク質 | アルブミン、ヘモグロビンなど |
タンパク質には動物性と植物性がある【犬猫には動物性が大切】
タンパク質には、
- 動物性タンパク質(肉類、魚介類、卵、乳製品など)
- 植物性タンパク質(豆類、米、小麦、野菜や果物の一部)
があります。
肉食寄りの動物である犬と猫においては、動物性タンパク質を摂取することがより重要となります。
特に猫においては、
- 植物性タンパク質にはタウリンが含まれていないこと
- 動物性タンパク質の方が消化率がいい
といった点で動物性タンパク質の摂取が望まれます。
※タウリンとは必須アミノ酸の一つで、生体内では作り出すことができないアミノ酸です。
動物性タンパク質として主に利用される食材とその栄養価【肉類】
動物性タンパク質源としてペットフードに利用される肉類には、牛肉・豚肉・鶏肉・鹿肉などがあります。
それぞれの肉類には、タンパク質源となることに加え、たくさんの栄養的メリットがあります。
以下でそれぞれに分けて説明していきます。
肉類①牛肉
牛肉は高カロリーなイメージもあるかもしれませんが、豊富な栄養素やそれによる効果が期待でき、良質なタンパク質源として重要です。
必須アミノ酸としてのトリプトファンは牛肉の赤身に多く含まれ、脳内でセロトニンやメラトニンという神経伝達物質に変換され、感情や精神面の健康、睡眠などに大きく関わります。
また牛肉にはカルニチン(必須アミノ酸のリジンとメチオニンより作られる)も豊富に含まれており、脂質の代謝に必要不可欠となっています。
他にも牛肉には、
- ビタミン2(成長、栄養素の代謝や呼吸促進)
- ビタミンB6(補酵素の成分、抗皮膚炎作用)
- ビタミンB12(体タンパク質合成作用、赤血球増血作用)
- ヘム鉄(酸素運搬作用)
- カリウム(酸-塩基平衡の維持、血液や細胞成分となる)
などが多く含まれており、重要な栄養素として積極的に取り入れていきたい肉類です。
肉類②豚肉
豚肉には、
- ビタミンB1(糖代謝に関与、抗神経炎)
- ビタミンB12(体タンパク質合成作用、赤血球増血作用)
- ニコチン酸(酸化還元に関与、抗皮膚炎)
- ヘム鉄(酸素運搬作用)
などが多く含まれています。
豚肉にはビタミンが豊富というイメージがありますが、まさにその通りで、ビタミンB1においてはなんと牛肉の約8倍近く含まれています。
ビタミンB1は別名「疲労回復ビタミン」と言われ、糖質がエネルギーに変わるのをサポートしています。
不足してしまうと乳酸などの疲労物質が体内に貯まり疲れやすくなってしまうので、積極的に豚肉を摂取する必要があります。
肉類③鶏肉
ペットフードには鶏肉(チキン)を使った商品が多くあります。
鶏肉を使用したフードは、低脂質・低カロリーで良質なタンパク質が摂取できることが最大のメリットで、ダイエット食としてもよく利用されるタンパク質源です。
また、ビタミンA(成長促進作用、抗眼乾燥症、抗菌力増強作用など)やビタミンB群も豊富に含まれ、部位により様々な栄養を摂れるので幅広く利用されています。
肉類④鹿肉
最近では野生の鹿による農地や民家への被害が多く、鹿を捕獲する機会が増えてきています。
捕獲した鹿肉を無駄なく使用するために、ジビエ料理として提供されたり、ペットフードなどによく利用されるようになりました。
牛肉や豚肉と比べるとタンパク質含量が高く、脂質が少ないことが特徴です。
また、
- ヘム鉄(酸素運搬作用)
- 亜鉛(インスリン活性化、繁殖に関与)
- ビタミンA(成長促進作用、抗眼乾燥症、抗菌力増強作用など)
- ビタミンB群
が豊富かつカロリーも牛肉の1/3程度なので、ヘルシーな肉として今着目されています。
動物性タンパク質として主に利用される食材と栄養価【魚類】
魚由来のタンパク質は、肉類に比べるとカロリーが低くヘルシーであり、また肉アレルギーがある場合などに利用されます。
主に使用される魚介類として、
- 赤身魚(カツオやマグロなど)
- 白身魚(サーモンやタラなど)
- 青魚(アジ、イワシ、ニシン、トビウオ;アゴなど)
があり、それぞれの魚介類はタンパク質源となることに加え、たくさんの栄養的メリットがあります。
以下でそれぞれに分けて説明していきます。
魚類①赤身魚
赤身魚とは、ミオグロビンという血色素タンパクが多い魚のことを言い、身が赤く見えることが特徴です。
赤身魚は白身魚に比べると栄養価が高く、
- ビタミンA(成長促進作用、抗眼乾燥症、抗菌力増強作用など)
- ビタミンB群
- ビタミンD(カルシウムおよびリンの吸収代謝促進作用、抗クル病作用など)
- カルシウム(骨や歯の主成分、血液凝固に関与)
- ヘム鉄(酸素運搬作用)
なども豊富に含むため、栄養バランスを整えたいときには積極的に使用されます。
魚類②白身魚
白身魚は、赤身魚に比べると血色素タンパク質が少ない魚のことを言い、身が白く見えることが特徴です。
低カロリーで良質なタンパク質を摂取できることから、筋力維持やダイエット食として主に利用されます。
白身魚の一つであるサーモンにおいては、アスタキサンチンという天然色素が含まれており、抗酸化作用が強いことから健康面で着目されています。
魚類③青魚
青魚とは、赤身魚のうち背中部分が青く見える魚のことです。
背中が青く見える理由は、不飽和脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン)やEPA(エイコサペンタ塩酸)を多く含むからです。
DHAはコレステロール値の上昇を抑えたり、肝臓での中性脂肪合成を低下させる働きがあり、EPAは血栓予防や血管の収縮を抑える効果があります。
赤身魚もこのDHAやEPAを含んでいますが、青魚はそれよりはるかに多く含有しており、健康維持のために昔から着目されています。
また、青魚より採取される魚油には、これら栄養素が濃縮されており、効率よく摂取することが可能です。
DHAやEPAは体内で合成することができないので、食品として積極的に取り入れる必要があります。
【まとめ】犬と猫にとって良質なタンパク質を摂取することは大事
肉食寄りの動物である犬や猫にとって、タンパク質は、
- エネルギー源となる
- 体の構造を作る
- 生理活性物質になる
ために非常に大切な栄養素です。
特に動物性タンパク質の摂取が重要で、肉類や魚類それぞれのメリットを考えながら選んでいく必要があります。
愛犬・愛猫の健康について考える際には、どんなタンパク質源を使っているのかを重視してみましょう。
【参考文献・資料】
- 日本食品標準成分表2015年版(七訂)追補2018年、文部科学省
- 臨床栄養学、インターズー
- 県内で捕獲されたニホンジカの肉の栄養成分、長野県工業技術総合センター総合研究報告、2010.9、p161-163