あらゆる動物には「飢え・渇きからの自由」「不快からの自由」「恐怖・抑圧からの自由」「本来の行動がとれる自由」「痛み・負傷・病気からの自由」という「5つの自由」があります。犬や猫の飼い主さんは、日頃のお世話を通じてこれらの5つの自由を与えることも大切な役目です。なかでも「痛み・負傷・病気からの自由」は受診や治療が必要なことが多いもの。病気やケガを悪化させないためにも、動物の痛みには早く気づいてあげることが重要です。
言葉で明確に痛みを伝えることができない犬や猫の痛みには、なかなか気づかないことがあります。さらに犬や猫たちに野生の頃から備わっている、敵に襲われないための防衛本能で痛みや体調不良を隠したがることも気づきにくい原因となっています。 静かに寝てばかりいると「うちの子は年をとっちゃったかな」と思ってしまうことも。また歩き方や座り方が他の子と違っても「家に来たときからずっとだから、うちの子はこういう子」と思い込んでしまうこともあります。
急性の痛みでは、まったく歩けなくなったり、いつもと違う声で鳴き続けたりするのですぐに異変に気づけます。
しかし関節や口腔内の慢性の痛みなどは、大きな変化が見られない場合もあり、なかなか気づきにくいものです。
犬は毎日散歩に行くので、「歩き方がいつもと違う」ということにはまだ気づくチャンスが多いのです。猫は痛みを隠すうえ、表情もあまり変わらないため、そのままにしてしまいがちです。
「普段からよく観察すること」これが最も重要です。日頃から身体をマッサージして、痛がる様子はないか、皮膚にできものがないかを確認しましょう。スキンシップにもなるので、おすすめです。 犬では散歩のときの歩き方、階段の上り方、ご飯の食べ方など日頃からよく見てあげてください。例えばいつもと異なるコースを散歩して階段を上ってみる、ご飯を与えたらその場をすぐ立ち去らず、食べる様子を確認するなどで変化に気づきやすくなります。 猫の場合はご飯をすべて食べているか、こぼしていないか、排泄はできているか、以前に比べ行動がゆったりになっていないか、高い所にいかなくなっていないか、など注意深く観察することが大切です。 特に多頭飼いの場合、
犬や猫のちょっとしたしぐさの変化を見逃さないことで、痛みに気づきやすくなります。次のようなしぐさや反応が見られたら、一度動物病院で診察を受けてください。
・ご飯をぽろぽろこぼす、お腹が減っているのに食べ残す・よだれをたらしている
・触ると嫌がる、怒る
・寝ている時間が長くなった、逆に短くなった
・しっぽが下がっている
・お尻を左右にフリフリして歩く
生まれつき股関節に異常がある
・同じところを舐め続けている
・あまり遊ばなくなってきた
・飼い主さんの座っているソファなどに上がってこなくなった
・キャットタワーなど、高いところを上り下りしなくなった・目覚めたとき、立ち上がるのに時間がかかるようになった・ジャンプが前より低くなってきた・動くものを追いかけなくなった・爪とぎの回数が減ってきた
さらに
早めに動物病院を受診しましょう。口ではなかなか説明しづらい場合もあります。歩いているときや食事の様子を動画に録って獣医師に見せると、受診の手助けになります。
関節の負担にならないように、太らせないことは大切なことです。おやつなどの与えすぎには特に注意したいですね。
定期的に獣医師にチェックしてもらうことは、痛みの早期発見・早期治療につながります。
関節の働きをサポートしてくれるサプリメントを与えることも、痛みの予防、悪化防止になります。 犬や猫など動物の痛みに最も早く気づくことができるのは、飼い主さんです。日頃から様子をよく観察したり、マッサージをしたりしてあげましょう。